LUCIE / MUSIC

Writing and Directioning

ピアノ

今や、子供からお年寄りまで多くの人に愛されているピアノは、連動するハンマーが弦を叩いて音を出す「打弦鍵盤楽器」。年齢性別を問わず「愛奏者」も増えました。「エリーゼのために」「乙女の祈り」といった数多の小品やショパン、モーツァルトらのピアノ曲は相変わらず定番的人気。ひととおり弾けるようになると、サティ、ガーシュウィン、ヒナステラ、ジョン・ケージ・・・などと、興味が現代へと向かったり、ジャズやポップスを自らアレンジして弾いてみたり、楽しみ方の幅も増したようです。ピアニストの活動も多彩になり、原曲を黙々と奏でる人から、独創的な自作曲のパフォーマンスで人気を呼んでいる人まで現れています。

例えばショパン演奏では、2000年「ショパン国際ピアノコンクール」の優勝者、ユンディ・リの詩的で優しくピュアな音色が相変わらず人気のよう。初来日会見の時「髪型がキムタク(木村拓哉)風ですが、アイドル的に売り出すのですか?」と、壇上のお偉方にプロモーション計画を尋ねたら、妙に取材陣にウケてしまい、暫く“クラシック界のキムタク”などと呼ばれてましたが、今ではかなり大人っぽい風情に。この「ポートレイト」はリストやシューマンも聴け、DVD付きで人気です。

でも“クラシカル・クロスオーバー”が好きなら、同じショパンでもマキシムのエキサイティングな「革命のエチュード」なんかが合うかもしれません。ヴァネッサ・メイやボンドを手がけたプロデューサー、メル・ブッシュに見いだされたクロアチア出身のパフォーマー的演奏家。視覚的にも楽しめるDVDがお勧めです。

ベートーヴェンは生涯に32曲のピアノソナタを作りましたが、中でも人気が高いのは「悲愴」「月光」「テンペスト」「ワルトシュタイン」「熱情」など。数曲ずつ組み合わせた盤が多く出ています。最近の日本人演奏家では、インプレッシブな演奏で人気の及川浩治、数年がかりで全曲演奏会を終えた仲道郁代らを聴き比べると、演奏家による表現の違いが分かるのでは。仲道はソナタCD全集も出していますが、まずは「悲愴・ワルトシュタイン・熱情」「月光・田園・テンペスト」のベスト盤から聴いてみるといいでしょう。

及川、仲道ともにショパンCDも複数出し、演奏も随時しているので、ユンディらとの聞き比べも可能です。

トルコ出身のファジル・サイは、作編曲家でピアニスト。ジャンルを超えた作風、オーケストラ曲を自ら多重録音したり、即興的な演奏をしたり、ピアノを叩く、弦にふれるなど万事独創的。「ジョン・ケージを彷彿させる」と面白がる人もいる反面、「なんであんな奇をてらったようなことするのか?」という声も耳にします。

目立ちたくてわざとやっているのではありません。例えば、即興演奏は子供の頃から先生に徹底的に教わり、身についてしまってるのです。音楽家や作品の理解を深めるのに、その人の思考や言動、人生背景などを捉えたドキュメンタリーや書籍に触れると有意義ですが、初DVD「鬼才!天才!ファジル・サイ!」からもそのことは理解いただけるでしょう。

彼の作品を弾きたがるピアノ愛好家も増えていて、弦に触れるユニークな奏法で民族楽器の音色を表現した「ブラック・アース」や演奏会のアンコールでおなじみ「トルコ行進曲“ジャズ”」などは、とりわけ人気が高い様子。音盤だけでなく映像も見ると、よりファジルに近づけそう。

最新DVDは、06年、07年の東京ライヴからのチョイスで、聴衆のリクエストテーマに応えた即興演奏もちゃんと収録されています。

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