LUCIE / MUSIC

Writing and Directioning

ヴィオラ

ヴィオラは、ヴァイオリンよりひとまわり大きいですが構造的には同じ。操法もほぼ同じなので、ヴァイオリンからの転向者が多いです。プロの中には曲によって持ち替え、両方を弾きこなす器用な人もいます。ただ、ヴィオラのためのオリジナル作品は大変少ないので、一般にはまだまだ知れ渡っていません。既成曲でソロ活動するには困難も多いため、ソリストも少ないのが現実。でも逆に、やりようによってはチャンスのある楽器とも言えるでしょう。弓で弾く弦楽器の中で中音域を受け持ち、ほどよい温もりと柔らかさをたたえた魅力的な音色です。ヴァイオリンだと高音が耳障りだったり、演奏者によってはヒステリックに聞こえたりするのに、ヴィオラだと憂いにさえゆったりした奥深さを感じられるのが不思議。

日本人の第一人者、今井信子のこの盤は、「愛のあいさつ」「愛の喜び」「G線のアリア」をはじめ、ヴァイオリンやチェンバロなどに書かれた曲をヴィオラ用に編曲したものが殆どですが、どれも「オリジナル曲」であるかのような風情。ナチュラルでのびやかな音色を楽しめます。

ユーリ・バシュメットは、ウクライナ出身で、ミュンヘン国際コンクールで76年に優勝して以来、世界で活躍。日本にもたびたび訪れています。

ふたりとも若手の育成にも熱心で、前述のコンクールでバシュメット以来21年ぶりに優勝した日本の清水直子は、ドイツ留学時代、大学で今井に師事していたといった具合に、先駆者の教え子が世界にでていく時代になっています。

清水はベルリン・フィルの首席奏者に抜擢され、活躍中。活動拠点がヨーロッパゆえ、頻繁に演奏を聴けないのが残念ですが、それでもベルリン・フィル来日期間中、合間を縫うようにアンサンブル演奏したり、夫でピアニストのアイディンと演奏したりしています。

バシュメットや清水のアルバムにあるシューマン「おとぎの絵本」は、ヴィオラの名曲。聴き比べも楽しいものです。

さて、共にイスラエル生まれでアメリカを拠点に活躍のヴァィオリニスト、パールマンとズッカーマンが“共演の妙”を披露しているのが、このモーツァルト盤。ヴィオリストとしても知られているズッカーマンが二重奏曲でヴィオラを巧みに弾き、“持ち替え”の妙技を味わわせてくれる珍しい録音だ。

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